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title.png 相続トラブルその1 子のいない夫婦の相続
n02.png 相続トラブルになりやすい事例として、子のいない夫婦の相続があげられます。なぜでしょうか?

1.妻と夫の親との相続問題

 ここに1組の夫婦がいます。彼らには子供がいません。もしも夫が亡くなれば、妻はかならず相続人になります。第一順位の相続人である子がいないのであれば、第二順位である夫の親が相続人となります。両親とも健在なのであれば、遺産分割は、妻と夫の父親と母親で話し合われます。法定相続分は、妻が3分の2、両親が3分の1となります。

 妻の方が相続分は多いですが、頭数は両親が上ですし、嫁姑問題もからんでくると、もめそうですね。


2.妻と夫の兄弟との相続問題

 夫の両親がともに、他界しているのであれば、第三順位の夫の兄弟姉妹が相続人となります。夫の遺産分割の話し合いは、妻と夫の兄弟姉妹の間で行います。法定相続分は、妻4分の3、兄弟4分の1となります。

 兄弟姉妹が多ければ多いほど、もめてしまう可能性も高くなり、嫁と小姑の問題もあるでしょう。疎遠であった兄弟が相続のときだけ、夫の財産を分けろと主張してくると、妻も腑に落ちませんね。連絡しても返事を返してこない兄弟や、行方がまったくわからない兄弟もいるかもしれません。たとえ、分割の主張をして来ないからといって安心はできません。夫名義の銀行などの預貯金を解約する際は、相続人全員の同意書や印鑑証明書などの必要書類が必要になるのです。行方不明者の書類を揃えるには、家庭裁判所に対しての手続きなども増え、とても大変になってしまいます。


3.妻と夫の甥姪との相続問題

 夫の兄弟の中で、夫よりも先に亡くなっていて、かつその方に子供がいる場合、つまり夫からして甥や姪がいる場合は、彼らが夫の兄弟(甥や姪の親)に代わり、夫の財産の相続人となります。

 妻の相続分に変わりありませんが、遺産分割する上での話し合いをする相続人の頭数がさらに増えることになります。手続きは煩雑となり、遺産分割も争いがおきる可能性も高まります。


4.後妻と前妻の子との相続問題

 夫に離婚歴があり、先妻と夫との間の子供がいる場合、あるいは妻以外の女性との間で夫が認知した子がいる場合は、相続人は、妻(後妻)と先妻の子(または認知した子)
となります。 相続分は、妻が2分の1、子が2分の1です。

 遺産分割の話し合いにおいて、先妻の子または認知した子が未成年である場合、代わりにその親である先妻または認知された子の母親が妻と協議することになります。妻に子がいることを知らせていなかった場合には、ずべての財産を譲受けると思っていたにもかかわらず、とんだ不意打ちになります。



title.png 子のいない夫婦の相続がトラブルにならないためには?                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
n02.png 子のいない夫婦の相続において、トラブル事前に防ぐにはどうすればいいのか?


1.夫が元気なうちに遺言書で遺産分割の方法を指定する。

 嫁と姑の話し合いも、嫁と小姑の話し合いも、前妻と後妻の話し合いも酷ですね。そんなとき遺言書をつくるのがおススメです。遺言書があれば、その内容が優先され、遺産分割協議をする必要がなくなります。

 はじめて顔を合わせるもの同士の遺産分割も、仲をこわしてしまう遺産分割も、もともと仲の悪い者をさらに悪くする遺産分割も、遺言書にて遺産分割方法の指定をすることにより、避けることができるのです。


2.遺言書で夫亡き後の妻に最大限の遺産を残すことができる。

 遺言書では、遺産分割の方法を遺言者が自由に決めることができます。特定の相続人に遺産のすべてを残すと決めることも自由です。

 しかし、相続人の中には、遺言者がどのような遺産分割の方法を決めたとしても、最低限保障される相続分の割合が決まっています。それを遺留分と言います。遺留分がある相続人は、子・配偶者・直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありません。

 兄弟姉妹に遺留分がないのであれば、もちろん甥や姪にも遺留分はありません。妻と夫の兄弟姉妹、また妻と夫の甥や姪が相続人になる場合には、遺言書にて「遺産はすべて妻に相続する」と決めることにより、遺言書どおりの遺産分割が可能となります。
 ちなみに遺留分は相続人から意思表示されてはじめて、効果が生まれるので、親の言うことだから、子が言うことだから、遺言者の言うことだからと納得すれば、遺留分を侵害している遺言書の内容でも、そのとおりになる場合もあります。また遺留分を主張されても、できる限りの遺産を特定の相続人に残すことが可能となります。


3.遺言書で遺言執行者を選任しておく。

 遺言書を作っても、相続人が複数いる場合、相続人分の必要書類を集めたり、同意や印鑑をもらったりと、手続きが大変であることに変わりありません。そこで、遺言書において、遺言執行者を選任しておくと便利です。

 遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実行する人のことです。被相続人の代理人であり、相続人全員の代理人です。遺言執行者を選任することは、ケースバイケースで、必ず必要なときもあれば、任意である場合もあります。しかし、任意である場合でも、とても便利なことが多く、相続人全員でしなければ行うことのできない手続きでも、遺言執行者一人で手続きを済ませてしまうことが可能になるんです。