HOME > 相続トラブル事例その2 財産の大半が自宅

title.png 相続トラブルその2 財産の大半が自宅
n02.png 相続トラブルになりやすい事例として、「財産の大半が自宅」の方々があげられます。なぜでしょうか?

1.不動産を共有する

 ここに兄と弟、1組の兄弟がいます。彼らは亡くなった母の遺産を分割するための話し合いをはじめました。遺産は、母が住んでいた家のみです。土地建物ともに、母名義で、資産価値は3000万円です。

 不動産を分割する方法に、「共有」があります。その不動産全体を使用・管理・処分する権利を共に持っている状態のことを言います。兄と弟の遺産分割がまとまらなければ、法定相続分どおりに、兄2分の1、弟2分の1という持分で共有するのもひとつの案かもしれません。

 しかし、それは問題の先送りしているだけにすぎません。共有している不動産は、共有者全員の同意がなければ、処分することもできないですし、仮に、兄が亡くなった場合、兄の2分の1の権利は兄の家族に相続されます。たとえば、兄の嫁と兄の子と兄の弟で共有することになれば、その分話し合いの際の頭数は増え、さらに意見がまとまらなくなります。


2.不動産そのものを分割する

 不動産には、土地と建物があります。建物を二つに分けることはできませんが、土地は二つに分けることは可能です。これを分筆と言います。土地そのものを分けることができるのであれば、兄弟の法定相続分どおり、土地の面積の半分ずつ兄と弟に分けるという方法もひとつです。

 しかし、土地の分筆はむずかしい課題がたくさんあります。建物が建っている場合は物理的に分けることが難しくなるでしょうし、たとえ同じ面積で分けたとしても、道に面している土地か否かで、価値も変わります。面積が狭くなると資産価値も下がるでしょうし、地域によって、分筆自体できない場合もあるのです。


3.不動産の売却金を分割する

 相続人全員が売主となって、不動産を売却した金額を相続人で分割する。金銭であれば、相続人が多くても、法定相続分が複雑でも正確に分配が可能です。

 一見すると、とても公平な分配ができるわけですが、公平に分配すると困る人がいます。誰でしょう。亡くなった母は兄の家族と同居していたとしましょう。兄は長男と言うことで、「家を守る」という使命のもと、あるいは「家を守って欲しい」という親の願いのもと母と一緒に住んでいたかもしれません。母は生前から残った財産は全部長男に譲ると口約束していたかもしれません。兄家族は、一生懸命に母の介護をしていたかもしれません。一方次男は自立して、実家から遠くに暮らし、ほとんど帰ってこないかもしれません。長男からすれば、母の遺産はすべて長男である私が引き継ぐべきだと思っているかもしれません。住み慣れた家を売るのは反対かもしれません。

 不動産を処分するには、共有者全員の同意が必要です。長男の同意がなければ、家を売ることもできないのです。


4.不動産を一方の相続人に、見合った金銭を他方の相続人に

 相続人のうちの一人が相続財産である持ち家に住んでいたのであれば、その人が相続することが自然なことかもしれません。しかし、遺産が持ち家だけだと、不公平な結果となってしまいます。

 そこで持ち家を相続した相続人が他方の相続していない相続人たちに見合った金額を支払うことで公平を保ちます。先の兄弟を例にすれば、長男が遺産の持ち家を相続し、次男に対しては見合った金額を長男が支払います。持ち家の資産価値が3000万円である場合、1500万円を次男に金銭で支払うわけです。

 しかし、見合った金額を支払うことは大変です。たとえ分割で支払うという協議まとまり、長男の支払いが滞ったとしても、一度成立した遺産分割協議の内容を次男から変えることはできません。そこから新たなトラブルが生まれてしまいます。


title.png 財産の大半が自宅の相続がトラブルにならないためには?                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          
n02.png 財産の大半が自宅の相続において、トラブル事前に防ぐにはどうすればいいのか?


1.親が元気なうちに遺言書で遺産分割の方法を指定する。

 「長男が家を守る」「長男に面倒見てもらってるから、遺産は全部長男に。」

 このように考えているのであれば、必ず遺言書をつくっておくべきでしょう。分ける遺産が持ち家しかない場合、不動産は分けられない遺産、分けるのが難しい遺産であるので、協議が難航するのは必至です。


2.生命保険を使って、受取人を長男にする。

 問題は遺留分です。全財産を長男に相続させると、次男の遺留分を侵害します。この場合であれば4分の1です。相続財産は、資産価値が3000万円の持ち家だけなら、750万円を長男に請求することが可能です。

 生前から親が遺留分を主張しないように次男を説得するのもひとつかもしれません。生前に家庭裁判所に申し立てれば、遺留分の放棄も可能です。それができれば完璧です。それができずに遺言書の付言事項でなぜ長男にすべて相続させるかを次男が納得するように記載することもひとつでしょう。

 しかし、それでも次男が遺留分を主張をすることもあるでしょう。その場合には、750万円を用意するしかありません。母の生命保険をかけ、死亡したら750万円を長男が受け取るようにするのです。

 貯金ではなく、なぜ保険にするかというと、保険金は受取人固有の財産となり、相続財産に含まれないからです。貯金は相続財産に含まれるので、遺留分が1000万円になります。

 そして受取人は次男ではありません。長男です。次男が受取人になると、750万円は次男固有の財産となり、次男は長男に750万円の遺留分を請求することができます。

 このようなことから、生前からの対策が不可欠になってきます。